あなたを見ているときだけ世界は完璧だ

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ちはやふる腐れオタク感想

あーもうすげえよかったです。
公開終了が近くなってから観たんですが、信頼できる友人を、忙しいというのに無理に誘い出してレイトショーで2回目観ました。
そもそもなんで観に行ったのかというと、Perfumeが主題歌歌ってるからだったんですけど、完全に映画にやられて帰ってきました。

以下ネタバレ感想です。原作ものだし、ネタバレもクソもないですよね、という方に読んでいただきたい。

まず、この映画の脚本がかなり緻密にできてるんですよ。太一と千早が再開するシーンで、屋上がわからは開けられないドアを開けて入ってくる女の子は、のちにかるた部の貴重な戦力になる子ですし(しかもこのシーンではそれには一切触れずにモブとして扱われます)、もうこの時点で弓道部のランニングを抜け出している表現も布石として行われている。太一が先物買いの女の子に入学早々呼び出されるシーンでは、これものちにかるた部に入部するある人物越しに声をかけられています。
重要人物たちの出会いが御都合主義に見えないように、太一と千早の生活圏に最初からちゃんといて、キャラクターに沿った生活をちゃんとしてる様子が描かれてるのです。これを緻密と言わずしてなんとしましょう。

そんな脚本なので、競技自体についてもぬかりありません。
・いまチャンスなのか、ピンチなのか
・それは何に原因があってそうなっているのか
が常に明らかなので、適切にドキドキしたりワクワクしたりできます。基本的なことですが、あんまりちゃんとしてる映画は多くありません。

まあ、過剰な映像ギャグとか、過剰なモノローグとか、日本映画らしい欠点はなくはないです。でも、競技自体の性質にも引っ張られて、後半にいくにつれて、静かな緊張感に満たされて、端正な感じになっていくのは好印象です。
(とは言え、クライマックスで関係者が喋るセリフ二つは要らないと思うな…。せっかくドキドキするシーンなのに…)

で、その脚本を映像化する上で凄いのは、やはり広瀬すずさんをはじめとする役者陣の説得力。特に、広瀬すずさんは有名グラビアアイドルの妹であり、競技かるたの有力選手でありつつ、かるた以外は残念感溢れる女の子、という設定を特に説明されずとも佇まいで伝える説得力ですよ。
残念というのは、ちとオブラートに包みすぎました。残念かつおバカ、が正確な表現だと思います。タマフルのリスナー投稿などを聴いてると、バカ演技が行き過ぎで物語に入れなかった、というような評もあったようなのですが、そこは、ちょっと待ってほしいと言いたいところです。(警告:この辺りからこの文章自体の残念感が盛り上がります。)

思い起こしてください。
・おバカ
・常に全力
・瞠目に価する身体能力
・戦う組織のリーダー
はい、誰のことでしょう?
モノノフくずれの私は断言します。それは、百田夏菜子さんのことです。私たちは、青春を全部差し出して、己の夢の階段を駆け上がっていった、愛すべきおバカを既に知っています。百田夏菜子を念頭に置いてみると、千早のキャラクター、広瀬すずさんの演技はリアルとしか感じられません。
蛇足ですがさらに付け加えると、ちはやふるの歌は燃え上がる情熱で竜田川を真っ赤に染める歌です。イメージカラーもばっちり!ほら、桜の花びらを散らしながら、校舎の屋上にちはやが現れるシーンで、「かなこぉー↑」と叫びたくなるじゃないですか(上映中はお静かに)。
だから大丈夫!ももクロ好きならきっと嵌まれるはず!(ももクロは出演しません)

そして、Perfumeの曲の使われ方。これも良かったと思います。予告編の印象をいい意味で裏切られました。
これ、劇中では一切ならないんですね。机くん復活のシーンで、くる!来ちゃう!とドキドキしながら観てましたが、来ない。来たら来たで、Perfumeファンの僕はガン揚がりでしたが、そうじゃない人にとっては映画の出来に疑問を感じるだろうし、Perfumeも嫌いになっちゃうと思うのです。テーマソングがかかると主人公が強くなる少林寺木人拳みたいなの、嫌いじゃないですけどね。エンディングも含め、劇中は劇伴のみで、スタッフロールでようやくかかるこの扱い、僕は丁寧だなーと思いました。
またね、FLASHいい曲じゃないですか。清浄で爽やか、そして切ない曲に、瞬間での完全燃焼を歌う歌詞が合わさって、映画視点でいえば読み札が詠まれてから札に手を伸ばすまでの一瞬のために積み重ねられた青春が、Perfume視点で言えば限られた時間をすべてPerfumeに投入した青春が、胸に迫ります。
原田先生は「賭けてからいいなさい」と言いました。そのとおり、全部賭けて、世界に飛び立っていった三人がエンディングを歌うんですよ。これは、千早たちにむけたエールだと思うのです。

そんなこんなですっかり広瀬すずさん演じる千早にやられる映画なのですが、ガチ恋しちゃっても大丈夫です。下の句でどうなるのか、原作未読なので知りませんが、上の句での千早さんは完全に恋愛についてイノセントなので、男の子たちだけが切ない思いに身をよじる構造です。これは、オタクとアイドルの関係性に似ています。そして、肉まんくん以外は激しく推し被りの状況。
ぜんぜん推しに会えない在宅の新、病みがちなガチ恋太一、思いをストレートにだせない楽曲派の机くん、自分に近いタイプを選んで感情移入し放題です。千早さん、完璧です。
ちなみに、KSDDの方は肉まんくん視点でどうぞ。

封切り当初は期待されたほどの動員がなかった(らしいすね)この映画ですが、公開から終了まで並み居る新作の攻勢に耐えてランキングに残り続けているようです。これはつまり、口コミとリピートで残ってるということで、見るべきいい映画ってことですよ。もう下の句が始まっちゃうので、未見の方はお急ぎください。
下の句も超楽しみです。