アイドルと恋愛　Hello No Buddy - あなたを見ているときだけ世界は完璧だ

我々が務めて考えないようにしているテーマに、アイドルの皆さんの恋愛、というのがあります。これは一種の職業的な呪いです。僕は既婚者なのでカッコつけて無関心を装ったりしますが、それはあくまで装ってるだけです。最初から自分が推しとどうこうなる可能性なんか絶無なのはわかっていますが、それでも恋愛系の報道にはダメージを受けます（Perfumeが初めて写真週刊誌にとられたときに思い知りました）。既婚のおっさんオタクですらこうなのです。ましてや、日夜ガチ恋諸氏の相手をしているアイドルさんが受けているプレッシャーや職業的義務感というのは想像を絶するものがあります。

callmeさんの新曲、Hello No Buddyは、結果的に、その領域に踏み込むことになった楽曲です。今回のリリースに際して、富永美杜さんは恋愛についての歌詞をオーダーされたそうです。何度か作詞を試みたものの、内容が浅いとの評価で、スタッフのOKがでない。結局、「体験がないからわからない！」ということを詞にしたらOKが出た、という話をライブのMCで聞きました。「結果的に」、と書いたのは、運営が作家にラブソングをオーダーするのはまあ、普通の話です。でもこの場合、その作家というのがアイドル本人なわけで、そうすると、彼女が真剣にオーダーに応えようとすると、限りなくリアルな「アイドルにとっての恋愛」の歌にならざるを得ないのです。（楽曲セルフプロデュースって、危険です。）「Hello No Buddy」は恋人と別れた人が、ふと相手の不在に気づいたときに、苦笑交じりに「Hello No Buddy」とつぶやく、というイメージだと聞いた記憶があります。

歌詞は、眠れない夜に恋愛に思いをはせるところから始まります。
・知りもしない思いに（夜が）更けていく
・（胸を）締め付く鼓動、誰か教えて
この時点でなんかもう切なくてうなだれます。
だってさ、だってさ！三人ともあんなにかわいいんですよ！あんなにいい子だし！！
でも、アイドルという職業にまじめに打ち込み続けた結果、こうならざるを得ないわけですよ。21歳ですよ。大学で同じ学科にあんな子たちがいたら大変ですよ。でも、ああいう感じの子は、その歳になるころにはもう到底対抗不能な関係性のある彼氏かなんかがいるわけですよフツーは。そんな人たちが、恋愛の詞をオーダーされると、こういう詞が出てくる。切ないとしか言えないじゃないですか。「音のない空間で　一度でいい抱きしめて」ですよ。（音のない空間というのは、そのくらい夢中になれるような恋愛をして、という意味なのか、アイドル歌手としての自分を忘れて、という意味なのかはわかりませんが、）とにかくそういうのは、我々が言うべきことであって、彼女たちみたいな素敵な女の子がいうべきことではないんです。

I wanna feel affection
I've never felt that before
適当訳
愛情を感じてみたい
まだ知らないから…

とか、ちょっと悲痛すぎませんか…。

ちょっと脱線しますが、クラブチッタのブルーレイでも、秋元瑠海さんがFor youについて「大人の恋愛を書きました！」と宣言して、「手をつないで海辺を歩く、みたいな！」と言い、それに対して美杜さんと香美さんがきゃあきゃあ言っているのを聞いて、「大人の恋愛」についての認識のずれを強く感じたのですが、「Hello No Buddy」を聴いて改めて腑に落ちた感じがあります。真面目なんですね、とにかく三人とも。

Hello No Buddyわからないまま　誰にも言えないの
Hello No Buddy変われないまま　ねえどこかにいるなんてきっと信じちゃうから
この「変われない」は、自分の思い切りや強さが足りなくて変われないのではなくて、職業として変われない、ということだと思います。

富永美杜さんがこの曲の詞に悩んでいるときに、イベントで「恋愛の詞が書けないから、特典会で恋愛の話を聞かせて！」と言われたことがありました。僕は高校の同級生と結婚しているので、彼女たちの歳のころにはすでに妻と知り合ってはいました。だから、美杜さんだって実はもう将来のパートナーに出会っているかもしれませんよーみたいな話をしてしまったのですが、そんなこと言われても、今の彼女たちには現実的には恋愛する可能性がないわけで、申し訳ないことを言ってしまった気がしています…。
2番の「どこにもいないなんて言って笑わないでよ」という歌詞も、笑いながらちょっとちくっとする感じが伝わって来ます。
(※歌詞を聞き違えていたので修正しました)

くりかえし出てくる英語詞の部分を例によって適当に訳すと

なんとかして誰かに愛をささげたい
でもそれが難しいのもわかってる
どうしたらいいの？
誰か、愛し方を教えてよ

…きっと、これがまじめなアイドルの本音なんだろうな、と思います…。

寒さが深まり、にぎやかさを増していく師走、人恋しくなる季節に感じる寂しさと、透明感あふれるアレンジに、いつもより柔らかい感じのお三方の歌声がよくマッチした、冬に聴きたい至極のバラードであることはまちがいありません。だけど、それだけじゃなくて、アイドルとして一途に生きてきた三人の生きざまがそれに乗って、単に素敵なバラードに終わらない一曲だと思います。
語られざるアイドルの秘密の一端を、アイドル好きなら聞き逃すわけにはいかないのではないでしょうか。

[Digital Single]
01. Hello No Buddy
02. Sing along (Remix)

【先行配信中】
2月にリリースする新曲から先行配信中です！
「Hello No Buddy」
冬に聴きたい極上のバラード。
是非、あなたに聞いてほしいです。https://t.co/G2HsgS08Dc https://t.co/amKYm9mHPA #callme
— callme (@callme_official) December 27, 2017